映画『ヒックとドラゴン』感想

 大晦日に『ヒックとドラゴン』を鑑賞したのだが、予想以上に良い作品だったので、ここに感想を書きつけておく。100点満点で95点を与えたいと思う。

あらすじ

 バイキングたちはバーク島に暮らしていたが、食料を強奪しに来るドラゴンに苦しめられていた。そのため、バイキングたちは日々ドラゴンを殺すために鍛錬に励んでいた。ところが、族長(ストイック)の一人息子、ヒックはどうにも間が抜けており、戦士に向いていないのは誰の目にも明らかだった。
 そんなある日、ドラゴンがまたしても島に襲来した。ヒックは自作の投網機を使ってドラゴンを仕留めたが、誰にも信じてもらえなかった。そこで、ヒックはドラゴンの墜落場所を推測し、その周辺を捜索したところ、最恐のドラゴン、ナイト・フューリーを発見した。ヒックはナイト・フューリーにとどめを刺そうとしたが、心の優しさ故に殺せなかった。その後、ヒックはナイト・フューリーの元を訪れるようになり、彼と徐々に心を通わせていった。ヒックはドラゴンにトゥースと名付けた。
 時を同じくして、ストイックはヒックにドラゴン殺しの訓練を受けさせることにした。最初こそへっぴり腰だったヒックだが、トゥースを観察してドラゴンの習性を知り、その知識を活かしてドラゴンに対処できるようになった。島民たちはトゥースの手際の良さに感嘆するばかりであった。
 最終的に、ヒックは訓練生の中で最も優秀であると認められ、最初にドラゴンを殺す栄誉を与えられたが、彼にはドラゴンを殺す気は全くなかった。

よくあるテーマを扱っているが...

 『ヒックとドラゴン』で扱われているテーマ―父と子のディスコミュニケーション、他者との共存、自分に何ができるのか―は何ら目新しいものではなく、むしろありふれている。しかも、主人公が成長過程で恋人(アスティ)を得るというのもベタな展開である。
 それにも拘らず、本作が凡作に堕していない理由は2つあると思われる。1つ目はキャラクターに好感が持てることである。ストイックをはじめとする大人のバイキングはいかつい造形だが、愛嬌が感じられる。そして、表情も細かく描写されている。例えば、中盤、息子がドラゴンに肩入れしていることを知り、「お前は俺の息子じゃない」と怒りに任せて言い放つシーンがある。その際、ヒックに背を向けて立ち去る瞬間に見せたストイックの表情は絶妙であった。「しまった、言い過ぎた」「どうしていつも上手く思いが伝えられんのか」というストイックの内心が聞こえてくるようだった。
 また、ティーンのバイキングも魅力たっぷりである。アスティは言わずもがなだが、オタク系のフィッシュやチャラ男系のスノットにも魅力が感じられる。オタク系やチャラ男系のキャラはさじ加減を間違えると極めて不愉快なキャラになるわけだが、本作ではそのようなことはない。

 2つ目はヒックたちがドラゴンに乗っているときの動きがダイナミックになっていることである。ドラゴンに乗っているときのスピード感とスリルが適切なレベルで表現されており(過度に表現すると乗り物酔いを起こしかねない)、まるで自分がドラゴンに乗っているかのような気分を味わえる。 

ヒックとストイックについて

 ヒックはストイックの腕力は受け継がなかったようだが、勇敢さと観察力は確かに受け継いでいる。ヒックが観察力に秀でているのは、トゥースの観察を通してドラゴンの習性を次々発見していったことからも分かるが、実は、ストイックの観察力も高い。それはドラゴンの巣に上陸した直後のシーンで伺い知ることができる。巣の壁を破壊した瞬間、ドラゴンたちが次々と脱走するのを見て、他のバイキングたちは勝利を確信した。その一方、ストイックはドラゴンたちの挙動がおかしいことを察知し、何かが来ると確信していた(何が来るのかまでは具体的に把握していなかったようだが)。おそらく、ヒックの観察力はストイック譲りのものであろう。
 なお、2人の勇敢さについては劇中ではっきり描写されているので、敢えてここに書くようなことはしない。

欠点について

 不自然な点が2つあったのでそれを指摘しておこうと思う。1つ目はヒック&トゥースとボスドラゴンの戦いをバイキングたちが傍観していたことである。傍観していたこと自体は問題ではないが、その前に族長が「島の裏側に避難せよ」という命令を出したにも拘わらず、何故誰も従わずにその場に留まっているのか。
 2つ目はボスドラゴン討伐後、島民たちがドラゴンとの共存をあっさり受け入れたことである。あれだけドラゴンを殺すことに執着・熱狂していた島民が、ドラゴンと特に何ということもなく共存しているのはやはり不自然である。ただ、人間とドラゴンの共存というテーマは第2作以降でさらに掘り下げられるようなので、この点に関しては第2作・第3作を鑑賞したときにもう一度取り上げたい。