読書メモ:三宅剛一『学の形成と自然的世界』(1940年)③第1章(1-13)

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第1章:プラトン以前の数学的宇宙論

第1節:ピタゴラス派の数学(1-9)

古代ギリシアにおける学としての数学と近代におけるそれとは学としての性格が異なる。
タレスとその弟子たちも幾何学に関心を持っていたが、彼らの知識には体系性が欠如していた。また、アナクサゴラスやデモクリトスは空間の研究を進めたが、学としての数学の方法を確立したとまではいえない。学としての数学を確立させたのはピタゴラス学派・プラトン学派の人々である。

初期のピタゴラス学派では、数は形として図形的に考えられた。図形はただ図形として見られたのではなく、単位数を表すところの「点」の一定の配列とみられ、図形はただちに数の性質を示すものであった。
数を上のように図形的に考えることは、数の性質と「物」の性質とを結びつけることによる。
初期のピタゴラス学派において、数は感覚的な形態を離れないものだった。
感覚的なものにおいて数を見出し、その性質や関係に目をとめるということは、独特な精神の働きである。

ピタゴラス学派は独特な信仰によって数に宗教的・神秘的価値を見出し、実利を離れた形で数を扱うことができるようになった。これは人間精神の日常的習性を根底から変革するものであった。
ピタゴラス学派の数学史上の意義は、数学の学問的研究を進めたことだけではなく、数学を自然学と結びつけ、数に宇宙の原理としての意味を見出したことにこそある

 

第2節:宇宙の秩序と数(9-13)

ピタゴラス学派は数を互いに隔てられたmonadesの配列と考え、この数の構造を他の全ての存在構造における根本原理とした。
monadesは限定に関わり、monadesの多の可能ということが何らかの形でアペイロンに基づく。
ピタゴラス学派において、限定(ペラス)は無限定(アペイロン)よりも高い価値を付与されていた。彼らの宇宙論は倫理的・美的な価値観と不可分であった。

数を宇宙の秩序の原理とし、数に基づく秩序と調和との世界を以て価値あり美しき世界とする立場で、数学の研究が存在論的意味と同時に実践的意味を持った。