感想:『スタートレック:ピカード』シーズン2第2話「処罰」(ネタバレあり)

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ストーリーの概略

 USSスターゲイザーを自爆させたピカードだったが、ふと気がつくと何故か自宅にいた。辺りを探るピカードの前に、因縁の相手、Qが突如姿を現す。ピカードはQに何が起きているのか問い詰めたが、Qは「裁判はまだ終わっていないのだよ」などと話をはぐらかすばかりであった。ピカードはそんなQに苛立ちを感じつつも、Qからかつてのような余裕が失われていることを感じ取っていた。
 やむなく、ピカードは独力で事態の把握に努めたが、その過程で自分が今いる世界が元いた世界とは別の世界であると確信する。ピカードが今いる世界に惑星連邦はそもそも存在しておらず、異星人たちを武力で征服する連合が代わりに存在していた。その世界でピカードは名将として讃えられており、来るべき公開処刑イベント、根絶デーで処刑人を務めることになっていた。驚くべきことに、その処刑対象はボーグクイーンであった。
その頃、ピカードの仲間たちも意識を取り戻していた。セブンは地球人アニカ・ハンセンとして連合の大統領になっており、ボーグに同化された痕跡の一切が消え失せていた。しかも、見知らぬ男が自分の夫(執政官)として存在していた。ほどなくして、ボーグクイーンと対面したセブンは今いる世界がパラレルワールドではなく、時間改変が行われた後の世界であることを知らされる。クイーンによれば、改変が発生したのは2024年のロサンゼルスであるという。
 そこで、ピカードたちは太陽の引力を利用してタイムトラベルを敢行することにしたが、それには極めて高度な計算能力を擁する人物が必要であった。ピカード一行にかつてのスポックのようなブレーンはいない。もはやこれまでかという雰囲気が漂い始めたそのとき、セブンが起死回生の一手を思い付く。

感想

提示された謎―特にQの変質について

 本エピソードは多くの謎を視聴者に残した回であったと言える。以下に謎を列挙しておく。 

・今作において生じていると思われるQの異常は、『ヴォイジャー』で描かれたQ連続体の変容と何か関係があるのか
・『スタートレック』の世界で2024年と言えば、DS9のシスコたちが巻き込まれたベル暴動(失業者などを収容する保護区の劣悪な環境に耐えかねた住民が起こした暴動)が真っ先に思い浮かぶ。ただ、ベル暴動が発生した場所はサンフランシスコだったわけだが、本作の時間改変は何故かロサンゼルスで発生したことになっている。これは何故か。
・製作陣がベル暴動が発生した時代にピカードを放り込んだ意図は何か。
・ボーグがピカードに助けを求めてきたことと時間改変にどんな繋がりがあるのか。
・今シーズンのモチーフになると思われる言葉「星を見上げなさい」と時間改変はどこかで重なるのか。
・ボーグクイーンがピカード一行に協力してくれることになったわけだが、素直に協力してくれるのか。途中で何か仕掛けてくるのではないか。
・執政官を演じたジョン・ジョン・ブリオネスはソージ役のイサ・ブリオネスの実の父親である。敢えて実の親子をキャスティングした理由はあるのか。

 シーズン2を通してこれらの謎に答えが提示されていくのだろうが、個人的に1番気になるのはQに何らかの変化が起きたという点である。シリーズ全体を通して、Qは不老不死かつ全知全能の究極の生命体として描かれてきた。傍若無人なところがあるとはいえ、どこか憎めないところがあった。ファンがQを愛してきた理由もここにある。
 ところが、本作のQには愛嬌がほとんどなく、全知全能故の余裕もどこへやらという状態である。指をパッチンするだけで全ての物事を意のままに動かせるのだから、ピカードが気に入らないからと言ってビンタを食らわせる必要はないはずである。金縛りにでもすればよい。しかし、Qは何故かピカードを引っ叩いた。これはQに異常が起きていることを示唆する。第1話の時点でもそれは感じられたわけだが、私はジョン・デ・ランシーの演技スタイルの変化によるものだろうと解釈してしまった。

ファン向けの小ネタ

 本エピソードは昔からのスタートレックファンを喜ばせる小ネタが多く含まれていたように思う。例えば、ピカード一行は2024年にタイムトラベルするために、太陽の引力を利用しようとするわけだが、これは『故郷への長い道』(1986年)でカークたちがタイムトラベルのために使った手法と同じである。この手法は極めて緻密な計算を必要とするらしく、スポックは普段なら絶対に使わないであろう勘まで駆使して成功へと導いた。今回、スポックの代わりをボーグクイーンが担うわけだが、彼女がどうやってこの難行を成し遂げるのか見ものである。
 他にも、グランド・ネーガス、マートク、シスコのような懐かしい名前を久しぶりに耳にすることができたのは良かったと思う。ただ、好感の持てるキャラだった前2者が頭蓋骨での登場というのは少しばかり残念なことであった。ガル・デュカットのように共感する余地が全くない極悪人ならこれでも良かったのだが。

ボケキャラとしてのエルノア

 第1話の時点で、私は「士官候補生になったのだから、エルノアはボケキャラではなくなり、クルーのボケ担当はジュラティ博士1人になるのだろう」と予想していたが、早くもこの予想は良い意味で外れた。エルノアのおとぼけは惑星連邦の士官候補生になってもなお健在であった。ラフィーのジョークを真に受けたり、「臨機応変に対応しろ」と言われて取り敢えず敵を皆殺しにしたりする姿は忠犬を思わせてくれる。敵を皆殺しにするシーンは下手をすると狂犬感が出てしまうわけだが、どういうわけかそうなっていない。エルノアの身のこなしが華麗なのと、ラフィーの絶妙なツッコミ故だろうか。
 ところで、エルノアが天然ぶりを見せたところでどうとも思わない私だが、ジュラティ博士がボケた言動を繰り出すのを見るとどうにもつらくなってくる。これは「共感性羞恥」というやつなのだろうか。

エンディングへの不満

 本エピソードは執政官がピカードを追い詰めて終了するわけだが、ここで区切りをつけたのは頂けなかったように思う。と言うのも、ソージが登場しなかったことからして、第3話の冒頭でソージがピカード一行を助けに来るという展開になることが容易に予想できてしまうからである。また、エルノアが負傷したとはいえ、リオスの船には医療用ホログラムが搭載されており、ちょっとした傷なら治療できてしまう。これなら「エルノアの生死は如何に」的な緊迫感が漂うこともない。
 一行がどう助かるのかが予想できてしまうが故に、緊張感に欠けるエンディングになってしまった感がある。これならば、執政官を撃退した後に太陽に向かって徐々に加速していくシーンで区切った方が良かったのではないかという気がする。